2024年から、DXの取り組みに着手
2024年度に大阪DX推進プロジェクトのDX推進コンサルタントの専門家派遣を利用
Q. DX推進に挑戦するきっかけとなった自社課題は。
明治29年に印刷会社として創業した当社は、あらゆる業種のお客様からいただく印刷およびデザインのご依頼にお応えし、近年ではWebや展示会などを含む販促の支援にも力を入れています。業務管理には十年以上前に自社で構築した基幹システムを使ってきましたが、受注管理と請求管理で顧客データが連動しておらず、都度入力する必要があるなど、業務効率化の障壁となる課題がいくつかありました。
当社の特徴として、デザイナーが顧客担当も兼務し、制作業務と並行して見積り作成から請求まですべて行う体制を敷いています。大阪だけで約1,000社のお客様をデザイナーで分担していることもあり、今後の成長を考えると事務作業の効率化は重要な課題でした。また、マーケティングの強化に向けて、デザイナーがお客様からヒアリングした情報を効果的に活用するための環境整備も必要でした。

会社パンフレットやショップカード、ポスターや名刺などさまざまな商材で顧客の広報活動を下支えしている
Q. どのようなDX推進を行いましたか。
長年にわたって活用し、使い慣れた基幹システムでしたが、今後の業務改善およびマーケティングの強化を見据えて刷新することにしました。もともと社員がローコードツールで作ったものなので簡単な改修なら社内で対応できるのですが、全面的なリニューアルになるため外部の専門業者に依頼することにしました。
大阪DX推進コンサルタントの黒﨑さんにアドバイスいただき、まずは新しいシステムに望む仕様や機能を現場からヒアリング。それらをスプレッドシートにリスト化して業者と共有する形で要件定義を進めていきました。黒﨑さんからは要件定義を明確化し、最初に要望したことを記録に残す大切さを教えていただきました。システム開発を外部の業者に依頼するのは初めてでしたが、このアドバイスのおかげで認識のズレや費用の積み増しなどもなく開発を進めることができました。

業者とスプレッドシートを共有することで、修正事項等の見える化を実施
Q. DX推進後に経営内容や社内・社員に変化はありましたか。
約半年の準備期間と4か月ほどの開発期間を経て新システムの先行部分が完成し、業務の移管を進めています。業務負担の削減効果を実感するにはまだ時間が必要ですが、業務フローごとの顧客情報の紐づけなどは改善され、無駄な確認の手間は着実に減っています。
また、これまでは既存のお客様からのご依頼やホームページへの問い合わせを案件獲得につなげてきましたが、お客様からのヒアリング情報を基に、より積極的な提案を行う動きも生まれています。これまで受け身の姿勢になりがちだった社員も、提案やマーケティングの意義を理解するようになり、業務拡大への期待感が高まっています。

受注ノートで情報共有を簡略化|従業員のユーザビリティを意識し、新規提案などの業務拡大を図っている
Q. 今後どのような展開を検討されていますか。
新しい基幹システムはいくつかのフェーズに分けて開発しており、今後は請求などの経理業務もカバーしていく予定です。また、受注データ分析などの機能も加え、お客様ごとに最適な提案ができる環境を整えたいと考えています。システム刷新による業務効率化が進み、同時にマーケティングも強化されることで、さらなる会社の成長に向けた基盤が築けると期待しています。

新システムのメニュー画面|今後さらなる機能実装に向けてDX化を進めている
弊社はデザイナーが営業としてお客様のご要望に直接お応えすることで、他社にはない強みを発揮してきました。この文化と長い歴史で培ったお客様とのネットワークをさらに生かすためにも、デジタルを最大限活用していきたいと考えています。
DX推進コンサルタント黒﨑からのコメント
セントウェル印刷様のDX推進は、「提案活動の実現」という未来を見据え進められました。この実現には従業員の時間の確保が必要という想いからデジタル化を行った点が素晴らしい事例です。特に、使い慣れた自社開発システムの刷新という大きな決断に際し、外部業者との連携において、要件定義の重要性を深く理解した上で、取り組まれた事が印象的でした。現場ヒアリング、新システムに望む仕様等をスプレッドシートにリスト化し、記録に残すという丁寧なアプローチは、社内外の認識のズレをなくし、大きな費用増のないシステム開発として進められた成功の鍵となっていると考えます。
今後、経理や受注データ分析機能がシステムに追加されることで、セントウェル印刷様の独自性とお客様ネットワークがデジタルで最大限に活かされ、さらなる成長を遂げられると確信しております。

左より中井氏とDX推進コンサルタント黒﨑