各種金網の製造・販売・二次加工、金網加工品の製造・販売・網の張替え、その他線材加工品の販売
2022年から、DXの取り組みに着手。大阪DX推進プロジェクトのセミナー・連続講座を受講
2023年度から、DX推進コンサルタントの専門家派遣を利用
Q. DX推進に挑戦するきっかけとなった自社課題は。
当社は60年以上にわたり、工業用金網の専門メーカーとして幅広い用途の金網を製造・販売しています。コロナによる打撃からの回復に悩んでいた2022年頃、「売上・利益向上」「生産性・品質向上」「SDGs・カーボンニュートラル」「DX」という4つのプロジェクトチームを部署横断で組成し、長期的な成長をめざすビジョンを策定しました。ただ、DXは重点施策というわけではなく、他の3つの施策を支える扇の要のような位置づけでした。
DXチームはまず非効率な作業(めんどうな作業)や改善点、問題点などの意見を従業員全員から提出してもらい、会社の内部環境をまとめる作業を行いました。次に各部署に現状の課題をヒアリングし、デジタル化によって効率化すべき業務の検討を進めました。
品質を証明するための「ミルシート」という書類は、得意先から提示を求められるたびに膨大な資料の中から探し出す必要がありました。また、受注を管理する注文書を手書きで作成していたために書き間違いや記入漏れが起こり、作成にも確認にも時間を取られていました。その他の課題として、生産設備の稼働率の可視化や、寸法の記録にかかる手間の削減、在庫管理のデジタル化など、改善すべきポイントがいくつかありました。

工場では工業用フィルターや、空間演出に用いるデザイン金網を製造している
Q. どのようなDX推進を行いましたか。
各部署へのヒアリングと並行して、チームメンバーは2022年から大阪DX推進プロジェクトの各種セミナー(DXチームの作り方や、設備の自動化講座など)に参加し、知見を蓄えていきました。
またデジタル化を推進した際に「使えない」「使ったことがない」などの雰囲気が社内に蔓延し、抵抗勢力にならないようにする施策として、チーム以外の社員にもパソコン操作に慣れてもらうため、全員にエクセルの勉強をしてもらいました。
2023年4月からは大阪DX推進プロジェクトの専門家派遣を利用し、DX推進コンサルタントの黒﨑氏に伴走支援を依頼。ヒアリングで見えてきた課題に対して、どのようにアプローチすべきか指導していただきながら、社内の業務フローを少しずつ改善していきました。
具体的な取り組みとして、注文書に関しては以前から利用していた販売・生産管理システムと連携させ、システムに入力した受注内容が注文書に自動で反映されるようにしました。さらに、このシステムをもっと活用しようと見積書も連携。
その他、寸法の管理を自動化するため、デジタルノギスなどのIoTツールを導入。それまでは計測した寸法をその場で紙にメモ書きし、それをエクセルなどに再入力する手間が必要でしたが、これをIoT化したことで計測データが自動的に記録され、ミスが軽減されました。

左より時計回りにDX推進コンサルタント黒﨑と打合せを行う東田社長とDXチーム 製造部 課長代理 川路由夏氏・髙根氏・佐藤氏
Q. DX推進後に経営内容や社内・社員に変化はありましたか。
エクセルに習熟したスタッフが増えたことで、「データで入力する」ということに慣れてきたと感じています。その結果、手書きの不便さに気づき、デジタル化への理解が浸透しつつあると思います。
さらに大きな成果といえるのが、業務フローの標準化です。注文書や見積書を手書きで作成していた時は、どうしても社員ごとに作業の順番が違ったり書き方が異なったりしてしまい、管理が難しくなっていました。データを残し活用することを目的とし業務の標準化を考え、システム入力に移行したことでフローが統一され、人が入れ替わっても同じ形で作業できるようになりました。
Q. 今後どのような展開を検討されていますか。
当社のDXはまだ始まったばかりで、生産設備の稼働率の可視化や在庫管理のデジタル化など、まだ道半ばの取り組みも含めて数多く残されています。ただ、DXチームの努力によってその必要性や意義は着実に浸透しています。最終的には当社に最適な業務管理システムをオーダーメイドで構築したいという希望もあり、そのための課題を洗い出す意味でも現在の取り組みは重要なものです。
またDXの最終目標は省力化や効率化ではなく、あくまで生産性・品質向上を通じた取り組みが顧客にとってもメリットがあり、それが当社の成長につながってきます。そのためにも業務のデジタル化によってこれまで見落としてきたデータを可視化し、より付加価値の高い製品を得意先へ提供していきたいと考えています。さらにその先の展望として、かつて「ものづくり大国」として名を馳せた日本の製造業の再興にも貢献したいと願っています。
DX推進コンサルタント黒﨑からのコメント

左より代表取締役 東田龍一郎氏とDX推進コンサルタント黒﨑
マツバラ金網さんの素晴らしい所は、当社だけでなく視点がお客様を向いているところにあると考えます。そのためにデジタル化というツールをどのように活用していくのかを検討しているのがDXチームです。
チームの皆さんは営業、製造などの主業務がある中、デジタル化を兼務で行い、検討→実施を繰り返し、毎月社内会議で成果を発表しています。これができるのもチームとして動き、助け合うことが会社の風土になっている賜物だと思います。