Case

DX事例紹介

名阪船舶株式会社

業種

2024年取材

船舶貨物用資材(ダンネージ資材・ラッシング資材など)および荷役車両の販売、貨物保定固縛サービス
2022年から、DXの取り組みに着手

2023年度に大阪DX推進プロジェクトのDX推進コンサルタントの専門家派遣を利用

Q. DX推進に挑戦するきっかけとなった自社課題は。

当社は港湾運送に必要なダンネージ資材(貨物の破損や移動を防ぐもの)やラッシング資材(荷物の固定・締め付けるもの)、港湾用特殊車両などの販売、船舶への貨物の固定サービスを60年以上にわたり手がけてきました。業界の特殊性もあって販売管理が難しく、市販の管理ソフトが使いにくいという事情がありました。そこで独自に開発した販売管理ツールを長く使っていたのですが、実は3つの懸念がありました。

1つは、そのツールを開発したのが年配のエンジニアで、その人以外に裏側のシステムを理解している人がいなかったこと。2つめは本社が海に近いこともあり、津波などの自然災害でデータが失われるリスクがあったこと。3つめはコロナ禍で浮き彫りになった課題で、社外からシステムにアクセスできず、業務効率化の障壁になっていたことです。

加えて、当社は大阪、横浜、鹿島(茨城県)の3か所に拠点があるのですが、同じシステムを使いつつもそれぞれ独自のルールで運用していたため、販売データが一元管理できていませんでした。これらの課題から、新たな販売管理ツールの導入を検討する必要がありました。

(左)作業風景(右)複数の拠点を構え、輸送貨物に対する保定固縛資材を販売している。

Q. どのようなDX推進を行いましたか。

大阪DX推進プロジェクトの専門家派遣を利用し、DX推進コンサルタントの折原氏に伴走支援をしていただきました。具体的にはローコードツールの活用を勧めていただき、試しに総務・経理の承認申請など簡易な業務アプリを作成しました。また大阪府DX推進パートナーズ企業からのインターンも受け入れ、販売システムのサンプルを作ってもらうなどしてローコードツールへの理解を深めていきました。

検討の結果、販売システムの構築までは自分たちで行うにはハードルが高いと判断し、専門のベンダーに依頼することにしました。複数のベンダーと打ち合わせを行い、一番フレキシブルに対応していただけるところに依頼しました。最初の2か月ほどで大まかな仕様を決め、そこから約2か月で構築、そこからまた2か月かけて社内で試験運用し、細かい部分を調整して2024年5月に本格運用を開始しました。

左からDX推進コンサルタント折原、山内氏、髙橋氏、春日氏

Q. DX推進後に経営内容や社内・社員に変化はありましたか。

もともと拠点ごとに販売管理のルールがバラバラだったのですが、特に大きな問題だったことは、同じ商品でも拠点ごとに品番が異なっていたことです。そのため拠点間で販売情報を共有できず、経営効率を下げる原因になっていました。新システムの導入で品番を統一したことで、全拠点の販売情報を一元管理できるようになりました。また、システムの刷新に向けて各拠点と打ち合わせを重ねてきましたが、改めて拠点間のコミュニケーションを深める良い機会になったと感じています。

さらには、従来のシステムで対応できていなかった自動計算のフローなども組み込み、よりユーザビリティの高いものに生まれ変わりました。それまで紙の請求書しか発行できなかったのですが、PDFで得意先へメール送付できるようになった点も大きな進歩です。

請求書の管理画面。業界の特殊性にも対応できるよう構築されている。

Q. 今後どのような展開を検討されていますか。

3拠点の販売データを一元管理できるようになったことで、データ活用の可能性が大きく広がりました。せっかくローコードツールへの理解が深まったので、データ分析の機能なども組み込んで戦略策定に生かしていきたいと考えています。在庫管理など、まだ紙で行っている業務もあるので、これらもデジタル化していきたいと思います。

今回、ローコードツールというものに出会ったことで、自分たちでトライして理解を深めることができました。その結果「これ以上は無理だから外部に頼もう」という意思決定もスピーディーにできた上、運用しながらトライ&エラーで改良していくアジャイル型開発という手法も学ぶことができました。これらの知見を今後も業務改善に生かしていきたいですね。

DX推進コンサルタント折原からのコメント

DXが進んだ成功要因のひとつとして考えられるのは、「意思決定の速さ」です。導入ツールのイベントに参加された際、「自分たちの特殊業務にも使えそうだが、少なくとも最初の導入までは外部の知見が必要」とその場で判断されたため、以降のサポートは複数ベンダーの提出資料についての比較検討に徹することとなりました。
意思決定の速度を上げることで、ベンダーや私たちのような外部の支援機関を有効に活用できるという事例となりました。
なお全社展開にあたり、DXチームの担当者も品番を統一させる際の社内調整に骨を折られたそうです。DXへの取り組みをきっかけに、より円滑な社内コミュニケーション体制が形成されたことも、今後のローコードツールによる社内開発をさらに進ませる要因となるでしょう。

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