Case

DX事例紹介

大阪紙器工業株式会社

業種

2024年取材

段ボール、紙器、紙加工品、各種包装資材の製造・販売
2020年から、DXの取り組みに着手
2021年度に大阪DX推進プロジェクトのセミナー・連続講座を受講後、DX推進コンサルタントの専門家派遣を利用。

Q. DX推進に挑戦するきっかけとなった自社課題は。

昭和3年(1928年)創業の当社は、段ボールをはじめ幅広い外装・内装ケース、包装資材を製造・販売しています。取引先の業種は飲料、食品加工、電機など多岐にわたり、オーダーメイドが基本のため多品種小ロット生産が当社の特徴です。
日々の業務で売上や仕入れ、製造や労務管理などに関するデータが大量に発生しますが、以前はそれらの管理フォーマットが部門ごとにバラバラで、さまざまな形の資料が社内に点在している状況でした。基幹システムは導入していたものの、そこから各社員が管理しやすいようエクセルを独自で作成していたことが原因です。資料ごとに原価や利益などの数字に差があり、「どの数字を信じて良いかわからない」という状況に陥っていました。
また、営業管理用のクラウドツールも導入していたのですが、ほとんど活用できておらず、スケジュールを書くだけのツールと化しており、コストが嵩んでいました。加えて、このコストの問題からこのクラウドツールにログインして使える事務所の人間が5~6割くらいしかおらず、事務所全体でスケジュールなどの共有・把握が十分にできていないという問題もありました。

内装ケース、外装ケース、緩衝材などの最適なケースを完全オーダーメイドで作成

Q. どのようなDX推進を行いましたか。

大阪DX推進プロジェクトのセミナーに参加し、そこからDX推進コンサルタントの折原さんに伴走支援をしていただくようになりました。まず取り組んだのは、活用できていなかった営業管理ツールの廃止と、それに代わるツールの選定です。展示会に何度か足を運び、4つほどのツールを比較検討しました。どれも一長一短ではありましたが、プログラミングに精通していなくてもカスタマイズしやすく日本語でのサポートも充実しているノーコードサービスを導入することにしました。
導入にあたって意識したのは、取り組みを秘匿化・インナーサークル化せず、現場の意見を聞きながら進めることです。導入したサービスで営業管理アプリを他社様の伴走支援を利用しながら作った時も、ベテランの営業社員から逐一アドバイスをもらいながら設計しました。このアプリによって基幹システムのデータを統一されたフォーマットでアウトプットすることが可能となり、以前の「どの数字を信じて良いかわからない」という問題も解消されました。
また、事務所の全従業員・役員がこのノーコードサービスを利用してスケジュールや日報を見られるようになり、各社員のスケジュール共有や日報作成などの利便性も向上し、会社全体での情報共有が大幅に改善されました。

左から平田氏、DX推進コンサルタント折原

Q. DX推進後に経営内容や社内・社員に変化はありましたか。

社内の情報がスムーズに共有されるようになったことで多くのメリットが生まれています。スケジュール管理に関しては、外出や有給休暇などの予定を全社員がリアルタイムで把握できるようになり、スタッフ間の連携が大幅に改善しました。営業管理に関しては、顧客ごとの売上や訪問状況などを経営陣が把握しやすくなったことで、次のアクションをスピーディーに起こせるようになっています。「誰が何をしているか」が可視化されることで、より戦略的に動けるようになったと感じています。
また、業務改善に対する社員の意識も積極的になったと思います。製造部門では、これまで手書きで対応していた材料管理をタブレットに移行しようとしています。ノーコードツールは一般的な知識レベルでも現場に即したアプリを作れるため、社員の意識改革を促す意味でも導入して良かったと思います。

プログラミングの知識がなくても使えるノーコードツールで作成された、売上管理アプリの画面

Q. 今後どのような展開を検討されていますか。

短期的には2つの取り組みを進めています。1つ目は勤怠管理のDXです。新たに導入した勤怠管理ツールを先述のノーコードツールと連携し、会計や給与計算などの作業を簡素化したいと考えています。2つ目はホームページの刷新。現在のホームページは運用開始からかなり年月が経ち、サイトマップやユーザビリティに多くの課題があります。当社HPは6~7割がスマホ・タブレットからの流入にも関わらず、レスポンシブデザインにもうまく対応できていない状態です。ユーザーが必要とする情報にストレスなくアクセスできるよう再設計し、問い合わせ機能なども充実させて「24時間働く営業マン」としてリニューアルしようと考えています。
現在の社長は進取の気性に富み、展示会などで情報を集めて社内共有したり、新しい取り組みにチャレンジしたりすることにも肯定的なので、今後も業務改善につながるDXには力を入れていきます。
また、弊社は持続可能な企業運営を重視しており、一連のDXもその一環としてSX(サステナブル・トランスフォーメーション)推進室※が担っています。持続可能な企業づくりのためにも、「DX」を業務改善の重要な柱の一つに据えて取り組んでいく予定です。

※DXの取り組み立ち上げ時のDXチームを発展的に解消させ、SX推進室に移行。旧チームメンバーも部門を超えて、意見を出しています。

DX推進コンサルタント折原からのコメント

DXチームがうまく機能した事例です。社内から性別、年齢を問わずのチームは訪問するたびに活発な意見が出て、目標を達成されました。最初相談に来られた取締役が「私が入ると意見が出にくくなるから」とチーム参画を辞退されたことも、チーム活性化にうまくはたらきました。自社従業員を信じて任されることは、非常に大事かと考えます。

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