インテリア雑貨・服飾小物などの企画・卸販売・輸入
2018年から、DXの取り組みに着手
Q. DX推進に挑戦するきっかけとなった自社課題は。
当社は1971年に父が創業し、インテリア雑貨や服飾小物の卸販売を手がけています。扱う商品は家具や生活雑貨、食器といった日用品、ファッションアイテム、アクセサリーなど多岐にわたり、現在4,000社以上と取引させていただいています。私はもともとアメリカでITエンジニアとして働いていたのですが、家業の先行きに不安を感じたことで2018年に帰国。父の後継者として入社しました。
入社後、経営改善に向けて動く中で特に不便を感じたのがコミュニケーション環境でした。当時はメールサーバーの容量が社員数に対して明らかに不足しており、サーバーのパンクを防ぐため頻繁にメールを削除する必要がありました。
加えて、複数の拠点間での連絡に電話とFAXを多用していた点も目につきました。これらの手段はコミュニケーションのためにどうしても手を止めてしまいます。当時はチャットツールの活用が広まり、即座にリアクションする必要のない「非同期コミュニケーション」が浸透しつつあった時期。経営改善に必要な時間を確保するためにも、コミュニケーションの効率化は急務でした。
Q. どのようなDX推進を行いましたか。
コミュニケーションに関しては、入社の準備段階からチャットツールの導入をお願いしました。全社で一気に導入するのは難しいので、システムに強い数名の社員から試験導入し、最終的に全社へ広げる形にしました。さらにメールやスケジュール管理、データ共有などもクラウドツールを活用して業務効率を高めていきました。
紙のタイムカードを利用していた勤怠管理も同様にクラウドツールを導入しました。それまで総務担当者が「腱鞘炎(けんしょうえん)になりそう!」と言いながら手書きですべて処理していましたが、その負担も大幅に削減されました。
受発注管理は私の入社前から管理ツールを入れていましたが、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の機能を追加して、処理にかかる負担をさらに軽減しています。
Q. DX推進後に経営内容や社内・社員に変化はありましたか。
推進を始めた当初はやはり拒否反応があり、デジタル化したい社員と現状のオペレーションを変えたくない社員に分かれていました。状況を改善するには変えざるを得ないので、DXによって今後の業務環境が良くなることを根気よく伝えながら推進していきました。
その結果、新しいツールの導入に好意的な社員が増えていき、徐々にモチベーションも向上していったように感じています。特に顕著だったのはバックオフィス系の業務負担が大幅に軽減されたことです。営業に関してはデータでさまざまな指標を見ることができるようになったため、効率的な働き方につながっています。
業績についてはまだまだ改善の余地がありますが、コスト削減によって利益体質は入社当初よりも強化されました。現在、3D表示と自動音声による商品説明を組み合わせた新たな購買体験サービス「デジアル」を開発中で、このような新しい取り組みも社員のモチベーション向上につながっています。
Q. 今後どのような展開を検討されていますか。
先述のとおり、Eコマース上で商品を3D表示するシステムを開発中です。そこへ、さらにARや音声での商品説明を組み合わせ、オンラインながらも実店舗でショッピングしているような購買体験の提供をめざしています。「デジアル」と名付けたこのサービスによって、デジタルとリアルが融合された次世代のマーケティングを提案していきたいと考えています。
現在はBtoB向けのサイトで試験的に導入し、コンバージョン率や返品率などのデータを収集することで「デジアル」がECにもたらすメリットを検証しています。今後はBtoCのECにも展開し、さらに検証を進めていく予定です。
将来的には新たな購買体験を生み出すプラットフォームとしてグローバルに展開していきたいと考えています。