Case

DX事例紹介

大和鋼業株式会社

業種

2023年取材

大正14年創業。
鋼板加工業界を川上から川下まで結ぶ流通加工業を展開。厚鋼板の加工を得意とする。
2016年から、独自の開先ロボット開発に着手
2018年5月 ローコードの社内共有ツールを導入
2022年  大阪DX推進プロジェクトのセミナーを受講
2023年4月 社内独自の生産サポートシステムを開発開始

Q. DX推進に挑戦するきっかけとなった自社課題は。

当社は厚み3.2㎜~130㎜までの多くの鋼板を在庫し、切断から穴あけ、曲げ、溶接までを一貫生産する鋼板加工業を営んでいます。月産2万種類、20万個を超える多品種微量生産を複数の工場で担い、納めた加工品はパワーショベルやブルドーザーなどの建設機械、フォークリフトなどの産業機械の部品に使われています。
日々、リードタイムの異なる多種多様な部品を製造するため、それぞれの納期や進捗状況を判断しながら、経験と勘で加工する優先順位を決めていました。ただ、このやり方では明確な出荷日が納期直前まで定まらず、現場作業者と営業担当者が見通しの悪い業務に追われるストレスを抱えていることがわかりました。

複数の工場拠点で、加工処理を行っている。

Q. どのようなDX推進を行いましたか。

1.開先ロボットの開発
鋼板切断後の二次工程となる開先加工(溶接の際、接合する2つの部材間に溝を設ける二次加工)への顧客要望が増加。長年にわたるボトルネック工程を解消し、リードタイム短縮を実現させるべく、省スペースで導入できる開先ロボットの自社開発に着手しました。 2016年に産学共同研究を開始し、現在はロボットSIerの力を借りながら開発を続けています。

2.確定納期をお客様にお伝えできる社内プロジェクトの発足
部門横断のメンバーで構成する「納期の見える化プロジェクト」を発足させ、「何をどうすれば確定納期をお伝えできるか」をテーマに意見交換を繰り返し、データ分析(活用)による見える化を実施してきました。そのデータを活用してどんな工夫ができるかを各部門代表者が参加して、改善協議を進めています。このプロジェクトを皮切りに課題となっている工程を発見し、部門内のみならず部門を超えての意見出しを行う各種プロジェクトを同時スタートさせました。

3.ローコードツールの導入
ローコードツール上での活発な情報交流の土壌を浸透させることを目的に、部門を超えた円滑なコミュニケーションから必要な仕組みやアプリを話し合ってきました。
また、間接部門においては全社員が関係する「業務の見える化ワークショップ」を開催。業務の手順書づくりを通して、他部門業務を理解した上での改善協議の機会を設けました。社員が自分の想いを伝える場として朝礼時1分間スピーチを導入するなど、「人」を重要視したアナログ手法での組織活性化にも取り組んでいます。

付箋を使って業務フローを整理する社内ワークショップの様子

Q. DX推進後に経営内容や社内・社員に変化はありましたか。

「ITを駆使して会社に貢献したい」と考える情報システム部員の入社を機会に、システム構築を任せ、現状の基幹システムを補足する独自の生産管理システムを開発することにしました。「各種プロジェクト」での議論をもとに、「受注時に出荷日と作業着手日を設定するシステム」の構築をめざし、現場の意見を取り込みながら開発を進めています。幸い、先に挙げた取り組み効果から様々な意見が上がるようになっており、当社に合った良いものができるという確信を得ています。来春にはある程度まで完成させ、その後は実用しながら進化させていきたいと考えています。納期が明確になり、業務の見通しが良くなれば、取引先にも喜ばれ、差別化にもつながります。

Q. 今後どのような展開を検討されていますか。

独自開発の生産管理システムを運用に乗せていくことと、2年後に迎える創業100周年のタイミングで開先ロボットの本格実用化をめざしています。
理想的なシステムが設計され、ロボット開発が成功したとしても、それを駆使する現場作業者や営業担当者が、「その取組みの意義を理解し、新たな問題点を共有し、さらに進化させていく」という意識がなければ宝の持ち腐れです。DXを進めていくのは人材であり、並行してHX(Human Transformation)を進めていかなければ真のDX実現はありません。今後も大阪産業局のセミナーを積極的に受講しながらDXをはじめ、組織開発にも注力していきます。

顧客から評価の高い当社の開先加工。現在、開先ロボットを開発中。

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