Case

DX事例紹介

株式会社IBS

業種

2022年取材

医療ライフサイエンス、新エネルギー、航空宇宙、アグリカルチャー等の
多様な分野で活用される流体制御部品、機器、システムを開発・製造・販売している。
2021年度大阪DX推進プロジェクトの連続講座を受講。

Q. DX推進に挑戦するきっかけとなった自社課題は。

当社は流体制御の専門商社としてスタートしました。その後メーカーに転じ、流体を制御する部品であるバルブ、流体の漏れが許されない分野で使われるポンプ、さらにはプラントに組み込まれる酸素や窒素などのガス発生装置の製造までを手掛け、流体制御機器メーカーとして、多彩な業界のメーカーに供給しています。
※流体制御とは:液体や気体といった定まった形を持たず、形状を自由に変化させる流体を目的に応じて制御する技術

20年ほど前、小ロット多品種生産を効率よく行うため、1人の作業者が製品の組み立て工程を完成まで担う「セル生産方式」を導入しました。流れ作業のライン生産方式と比べ、状況に合わせてセルの増減やレイアウトを変更できることがメリットですが、だれにどの製品の組み立てを割り振るかは、製品や納期、数量、スキルに応じて、担当者が勘と経験で決めていました。このため製造現場の作業が積み上がっているにもかかわらず、営業の短納期設定と合わない事態が生じていました。

左より当社のバルブ、ポンプ、ガス発生装置

Q. どのようなDX推進を行いましたか。

DXのアクションを行う前に、なんのためにDXに取り組むのか社員の理解を深めるため、「デジタル産業化により、データドリブンで未来を生き抜く」というビジョンを定め、DXは「改善」ではなく「変革」のために行うのだという意識を共有しました。従来は各現場に改善の取り組みを求めていましたが、改善することが目的になってしまい、やらなくてもよい過剰な改善も行われていました。ビジョンにもとづいて会社があるべき姿に向かって目標を定め、そのうえで戦略、行動計画を作れるよう取り組みを開始しました。

DXの取り組みについてはいきなり本業の部分で導入するのではなく、新しく開発に取り組む案件について試してみる、いわゆる「出島作戦」を取っています。新案件では、業務をすべて洗い出したうえで見える化をするためのBIツール(企業が持つ各種データを分析し、経営や業務に役立てるソフトウェア)の導入、作業工程の自動化、5Gを活用した検品作業の遠隔化、ローコードツールの活用など、業務改革にチャレンジしています。

入庫不良を見える化したBIツール

Q. DX推進後に経営内容や社内・社員に変化はありましたか。

私は52歳なのですが、「あと何年で会社を変えられるだろうか」という焦りから、この1年でDXについて必死に勉強しました。若い社員たちと同じ立ち位置で会話でき、自分で判断できるレベルに達しておかないといけないと考え、大阪産業局をはじめ様々なセミナーにも参加しました。

また、このほど難病患者向けの在宅医療機器の開発・製造でクラス3(高度管理医療機器)の医療機器の薬事認証を取得しました。在宅呼吸器を遠隔で使えるようにすれば呼吸器も売れ、在宅医療のサービス化にもつながります。製造業と介護業は一見、関連の薄いように思いますが、業務フローで抱える課題は共通している部分があり、今回の経験が介護業界のシステム化にも活かせるのでは、と考えています。DXはこのように業務効率の改善だけでなく、既存事業の発展、新商品の開発にもつながる話なので、トップ自身がかかわっていないといけないのです。

積極的に新規事業を立ち上げながら、その推進力を既存事業でも活かしている。

Q. 今後どのような展開を検討されていますか。

この活動を全社に広め、社員に対しては、今までのように営業担当、製造担当という意識から脱却してもらいたいと考えています。社員は、自社をデジタル産業化に導くための「価値を創造し提供する」アーキテクターであり、データサイエンティストとしての意識を持ち、社長がいなくても会社が自走していく組織に育っていくことを願っています。

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