クラフトビール工場を備えたパブレストランを大阪市内で2店運営。
2021年春に完全キャッシュレスの新店舗がオープン。
Q. DX推進に挑戦するきっかけとなった自社課題は。
酒造業には、原材料管理、仕込み管理、製品の在庫管理、酒税の算出など、とにかく記帳業務が多い。どの材料を何kg使って、どのくらいの量を造るか細かい記録が必要ですし、毎月酒税を申告・納税しなければなりません。常に何かしらの記帳業務をしている状態です。2018年に2店目をオープンしてから作業の手間が倍以上に増え、「何とかしなければ」と思うようになりました。
Q. どのようなDX推進を行ないましたか。
既存の記帳システムもありましたが、導入費用が高額な上、専門的機能が多すぎて、当社の規模に見合っていませんでした。そこで、大阪産業創造館の紹介で知り合ったシステム開発会社と、小規模ブルワリー向けの自社システムを開発することに。半年ほどかけて完成したのが「記醸くん」です。これはスマホでも入力できるWEBブラウザ上の記帳システムで、仕込み日報に必要事項を入力するだけの簡単仕様。酒税も自動で計算できるようにしました。
Q. DX推進後に経営内容や社内・社員に変化はありましたか。
事務作業の時間が、従来の1/8程度になりました。また、2店舗で7~8人がビール製造に携わっているのですが、どこにいてもブラウザ上でデータが確認できるため、情報共有がスピーディーになりましたね。それと、以前は書き漏れなどによって、過去に造ったビールの完全な再現が難しい場合もあったのですが、履歴がきちんと残るので品質の安定化や向上にもつながっています。
自社で使ってとても便利だったので、その後、「記醸くん」を同業同規模の他メーカーにも販売することにしました。費用は月額使用料のみ、ネット環境さえあれば専用ソフトのインストール不要という手軽さから、リリース後約1年で、15社ほどに導入してもらっています。なお「記醸くん」に関しては、システム開発会社の代表や税理士を含めた5人で社団法人を設立し、運営・管理しています。
Q. 今後どのような展開を検討されていますか。
「記醸くん」で入力したデータを活用できるように、分析システムもつくっていきたいと思っています。その結果が、廃棄量の改善などにもつながるかもしれません。また、製造側だけでなく消費者側のデータも取りたいと考え、国税庁のフロンティア補助金を使って「ビアレコ」というクラフトビールのレビューサイトを開発中です。
これは製造側で自社ビールを登録し、消費者が簡単にレビューできるシステム。製造側のターゲティングを分析し、それによって品質改善や商品開発に生かすこともできます。
最終的には「記醸くん」と「ビアレコ」のデータを連携させていきたいですね。クラフトビールのシェアは、ビール業界全体の1%しかありません。そこをもっと広げていくためにもデータをうまく活用していきたいです。