整骨院に始まり、2011年から機能訓練特化型通所介護サービスを開始。現在、大阪市内2カ所でデイサービス施設を運営。
Q. DX推進に挑戦するきっかけとなった自社課題は。
-柴田取締役 整骨院は1階、デイサービス施設は2階にあり、スタッフ間の情報共有がしにくい状況でした。また介護サービス事業には、利用者さんごとの介護記録や介護保険の請求など、非常にたくさんの書類が必要です。それらの記入に時間を取られてしまい、スタッフの残業が増えたり利用者さんへのサービスが行き届いていなかったりという課題がありました。
Q. どのようなDX推進を行ないましたか。
-柴田取締役 スタッフ間の情報共有のため、2014年にチャットツールを導入。さらにタブレットを全員分購入し、利用者さんのバイタルやその日の行動などの介護記録を、そのつど入力することにしました。スタッフにとってタブレット導入は抵抗があったようですが、会社として「ICT化する」と明言。数カ月間、業務時間外に残業代を支払いながら研修をおこないました。デイサービスには利用者さんと同年代のベテラン看護師(当時は60~70歳代)も3名勤務しているのですが、彼女たちも積極的にタブレット操作に取り組みました。その後、段階的に会計ソフトや勤怠管理ソフト、業務管理ができる表計算ソフトなどを導入。ペーパーレス化が進んでいます。
Q. DX推進後に経営内容や社内・社員に変化はありましたか。
-柴田取締役 タブレットを導入したことで、明らかにスタッフが早く帰宅できるようになりました。2017年には年間400時間の業務時間削減を達成。現在はほとんど残業がありません。そのおかげで、スタッフの離職率も低いですね。またチャットツールの活用で、スタッフ間のコミュニケーションが取りやすくなり、「言った・言わない」の連絡ミスもなくなりました。
-佐々木氏 私自身が合計5カ月間の育休を取りました。介護業界の男性、しかも施設の責任者という立場でありながら育休が取れる会社は、かなり珍しいと思います。また業務の簡略化によって、利用者さんと話す機会が増えました。最近、70名近くの利用者さんに当施設の魅力についてアンケートを取ったところ、約95%が「スタッフとたくさん話せる、相談できる」と回答してくれました。病気や体調についてだけでなく、家族のことなど日常会話もしやすい環境が評価されているようです。
Q. 今後どのような展開を検討されていますか。
-柴田取締役 今後、スタッフの誰かが親の介護に携わることになるかもしれません。そうなった時でも周囲に相談しやすくフォローし合えるような職場環境が必要。また、スタッフの勤務時間をもっと短くできるのであれば、その方がいいと社長は考えています。そのために、必要なところはICT化していきたいですね。長く楽しく働いてもらうことで良いサービスが生まれ、それが利用者さんの安心感にもつながっていくのだと思います。