全71室・最大で100名収容可能なホテル。個人利用だけではなく、各種スポーツ団体の宿泊実績が年間約120件もある。
Q. DX推進に挑戦するきっかけとなった自社課題は。
-堀田社長 インバウンドが毎月のように過去最高を更新していた時期に、大阪や首都圏でホテルの建設ラッシュがありました。その頃、当ホテルも客室の改装を計画したのですが、異業種からもホテル業に参入している状況だったので、普通の改装では淘汰されてしまうかもしれないという懸念があったのです。そこでコンセプトルームのようなエンターテイメント性や利便性を重視し、何か付加価値のある改装を考えることにしました。
Q. どのようなDX推進を行ないましたか。
-堀田社長 東京のIT企業と連携し、2017年にツインルーム8室をIoT化しました。大きな特徴は、客室に設置した様々なIoTデバイスが、一元的に制御・操作できること。ルームキーの代わりに渡す各室専用のスマートフォン1台で、ドアの解錠、照明の明るさや色の設定、エアコンの温度設定などが可能。このスマホで目覚ましを設定すれば、セットした時間に合わせてカーテンが自動で開き、照明やテレビも点くシステムです。
-森本支配人 2013年に基幹クラウドシステムを導入していたこともあり、IoTスマートルーム導入に関するスタッフの抵抗感は、ほとんどなかったと思います。導入当初は不具合などがあった際の対処に手間取ったりもしましたが、現在ではスタッフのほとんどがシステムを熟知しているのでスムーズに対処できています。
Q. DX推進後に経営内容や社内・社員に変化はありましたか。
-堀田社長 改装前の全71室の月平均販売単価は6,800円ほどで、改装後は約7,300円に増えました。稼働率もコロナ禍直前までは80%台をキープしていました。また宿泊予約サイトでの評価も大きく改善され、スマートルームの導入前が平均3.45ポイントだったのに対し、2019年7月には4.26ポイントを獲得しています。
-森本支配人 スマートルームの料金設定は改装前よりやや高くなっていますが、それでもツインで8,600円~とリーズナブル。宿泊予約サイトでは「コスパが良い」という口コミもいただいています。
Q. 今後どのような展開を検討されていますか。
-堀田社長 一番導入したいのは、やはり快適な寝具です。海外のメーカーでは、振動で起床を促すなどのIoTベッドが開発されているのですが、補修や輸入への課題があって導入は難しいんです。国内の寝具メーカーに相談しながら、スマホで操作できるような快適なベッドを取り入れたいですね。また客室以外でのIoT化も展開する予定。お客様がお部屋にいながら混雑状況を把握できるよう、朝食会場や大浴場、ランドリールームなどにセンサーの設置を検討しています。コロナ禍で価値観や過ごし方も変わってきているため、次に改装するならそれらを加味して進めていく必要があると考えています。